[公開]:2018/12/30

「トラウマは存在しない」は要注意

ちょうどうちの相方(宮丸恵センセイ)とも話していたのですが、最近「トラウマは存在しない」という心理学を時々耳にします。しかしこの心理学は合う人/合わない人がいて要注意です。

 

まず「トラウマ」は意外とよく使われますので、皆さんご存知かと思います。トラウマとは心理学で「心的外傷(もしくは精神的外傷)」のことです。何か強いショックやストレスを受けて心の傷となり、後々までその影響が続いてしまうような体験のことを指します。

災害や戦争等のPTSD、DVやいじめ・親子関係が原因での悩みや生き辛さ、コンプレックスまで「過去の体験が今なお悪影響を及ぼしている」のがトラウマです。

 

でもって、もし「トラウマが存在しない」のなら、こういったことは誰一人発症しない事になりますが、はて?

トラウマについて言えば、同じようなショックやストレスを受けてもトラウマになる人/ならない人がいますし、その影響度もまちまち。つまり体験(経験)がどう影響するかは「人それぞれ」違うわけです。

さらにトラウマは体験(記憶)により心の中で起こることですから、その存在を証明することはできません。だからと言って「存在しない」と言い切って全否定するのはちと乱暴かと思います。

 

この「トラウマが存在しない」は、数年前に人気になったアドラー心理学の自己啓発本「嫌われる勇気(岸見一郎著)」が元になっているようです。この本では端的に言うと「トラウマは存在しないから、トラウマを言い訳にせず行動しよう」ってことなんですが、現実問題としてそれが合う人/合わない人がいます。

トラウマを言い訳にするような人やトラウマを抱えても行動出来る人にはこの心理学は合います。もともと「トラウマがない」か、もしくはカウンセリングやセラピーの必要がない「弱いトラウマ」だからです。

 

逆に災害や戦争でのPTSD、DVやいじめ、毒親などのトラウマがある人は全く合いません。むしろ害になることも多いでしょう。

こういった方は「行動しない」じゃなくて、トラウマで硬直したりネガティブな感情が甦ったりして「行動できない」のです。トラウマを抱えたまま無理して行動すれば、反動で余計に傷ついたり時に暴走するのがオチです。特に頑張りすぎたり自分を責めてしまうタイプの人は、余計に自分を責めたり苦しくなったり、ひどい時はそれで鬱になることもありますから危険です。

「トラウマは存在しない」というのは、トラウマで苦しんでいる/悩んでいる人に対しては、あまりに理解の無い考え方となりますので、こういうものにはよくよく注意して下さい。※本来ならこういうことを真っ先に明示すべきだと思うのですが。片手落ちもいいとこです。

 

余談ですが「トラウマは存在しない」、もしくは「トラウマは存在する」でググるとかなりヒットします。

いくつかのサイトを見て分かったのですが、「嫌われる勇気」のアドラー心理学では「トラウマや承認欲求は存在しない」とされていますが、実はアドラーさんはそんなことは言っていないそうです。アドラーさんの原著にもそのようなフレーズは全く出てこないそうです。これを「誤読と捏造」ときっぱり否定されている方もいました。

ですので、アドラーさんの著書(心理学)をもとに岸見さんが書いたのが「嫌われる勇気」で、いわば『アドラー心理学と銘打った「岸見心理学」』と言った方が正しいのでしょう。う~ん、なんだかね・・・もしかするとアドラーさんもあの世で「そんなこと言ってないんだけどな~」と苦笑いされているかも(笑)

 

また「トラウマが存在しない」が流行っている(?)のは、その方が都合がいい人が結構いるからだと思われます。

まず「トラウマセラピーができないから」ですが、中には「相手(客)がトラウマを持ったままにしておくと、長く都合よく利用できるから」なんて不届きな輩もいますのでご用心ご用心。

それと「トラウマ的なことを経験したことがないので理解できない」もしくは「トラウマを持っているがそれを認めたくない(変わりたくない)」という人も、トラウマが存在しない方が都合がいいのです。ちなみにこういった人たちは理解力・共感力に欠けていたり、全ては人のせい=他責タイプである可能性が高い・・・、ぶっちゃけ心理系やるには最悪ですので、この点にもご用心ご用心。

 

トラウマは存在するし乗り越えられるものです。毒親やDV、いじめのトラウマでも、戦争や天災によるPTSDでも、痛みや悲しみを乗り越え幸せになった方や、今なおトラウマに苦しみながらもそれを乗り越えようとしている勇気ある方も沢山おられます。

もしあなたにトラウマがあっても、必ず乗り越えられます。そのことを忘れずに、あなたの幸せを作る心理学を活用してください。

 

「トラウマは存在しない」は要注意

本日もブログをお読み頂きありがとうございましたm(_._)m心理カウンセラー・らぶさん印

 

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  • コメント ( 4 )

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  1. めぐみ

    私は父親からの性的虐待のトラウマで強迫性障害を患い長年難儀していますが
    アドラー心理学を根拠にトラウマは甘えだと主張する書き込みを見るたび自己嫌悪に陥るので
    このように専門家の方がトラウマ否定論に注意を促してくださるのは非常に有難いです。

    • 心理カウンセラーらぶさん☆佐藤愛彦

      めぐみさん

      コメントありがとうございます。
      アドラー心理学が役に立つ方もいるのでしょうが、トラウマに関するものはデリケートな問題でもあるので、(セラピストやカウンセラー側が)細心の注意を払うべきだと思います。
      これからも役に立つ記事を書いていくよう頑張ります!

  2. マイケルKフォックス

    本は読んでいませんが、先ほど中田敦彦氏の「嫌われる勇気」の解説動画を観ました。

    トラウマを否定されていたので、もう生きていけないって一瞬思い自殺がよぎりました。

    虐待を受けて苦しんでいる人は絶望しますよね。
    マジで焦りました。一瞬どん底に落ちました。危なかったです。

    ただ同時に違和感もありましたので調べていたところこのブログ記事にたどり着きました。
    救われました。ありがとうございました。感謝です。
    「岸見心理学」勘弁して欲しいです。

    • 心理カウンセラーらぶさん☆佐藤愛彦

      コメントありがとうございます。
      記事がお役に立ちましたら私も嬉しいです。
      あの心理学が役に立つ人もいるのでしょうが、それ以上に合わない人も多いです。
      心理学と名乗るのはやめて欲しいものです。

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