“ありがとう”で「カビの繁殖をコントロールできる」ってホント！？

確か2000年頃、かれこれ20年近く前のハナシになりますが、「水からの伝言」ってのがありましたね。

水に“ありがとう”などの感謝の言葉をかけると、凍る際にきれいな結晶ができ、逆に“バカヤロー”などの言葉をかけると、崩れた結晶になってしまう、というもの。

一瞬スゴイ！と思ったけど、何か違和感を感じ続けてましたが、今だと違和感の正体がわかります。

それは「言霊」みたいにも言われる「言葉に力（エネルギー）があるのかないのか」ということと、その実験方法について違和感があったのです。

「言葉」は決まった使い方と意味があり、人は「ありがとう」「バカヤロー」といった喜怒哀楽を表す言葉には、無意識的に「思い（感情）」というエネルギーを乗せてしまいます。

そして「言葉自体に力がある」と信じている人は、余計にそこに思いを乗せてしまうものです。

そしてもし、「言葉自体に力がある」のなら、日本語を全く知らない（理解していない）人が使ってもその力が発揮されるはずです。

ですから、「水からの伝言」の実験では日本語を知らない人を使わなければいけないのです。

なので、実験自体からしてちょっとね～・・・という感じ。

でもって、少し前にFacebookで見たのですが、これまたびっくりな「言葉の力の実験」がありました。

「ご飯」に“ありがとう”とか“バカヤロー”と言い続けていると、『言葉によって発生するカビの種類が変わる』というもの。こりゃまたびっくり！！！

で、結果はこんな感じ。

『ありがとう』：白いカビが生えて、匂いなし
『バカヤロー』：白いカビと茶色のカビが半々、酸っぱい匂い
『無視し続けた（何もしない）』：緑色のカビが生えて、ひどい悪臭

いやいやいやいや、ちょっと待て・・・元技術屋の視点＆心理カウンセラーの視点からして、ツッコミどころ満載。

まず、単一（単色）のカビ、もしくは2種類のカビだけが発生する、というのがなんとも不可解。

正月の鏡餅を生餅使ったことがある方なら見たことあると思いますが、鏡開きの頃には赤白緑黒・・・と様々な色のカビが生えます。

つまり、いろんな種類のカビ菌はどこにでもいて、いろんなカビが生えやすいってことです。

日本では納豆や酒（こちらは麹と酵母）、ヨーロッパならチーズなどにカビを利用しますが、いずれも特定の菌が繁殖しやすいように温度や湿度をコントロールします。

でないと余計な菌が繁殖して、目的の菌を圧倒してしまうからです。

それが「言葉をかけるだけでカビの発生をコントロールできる」のですから、本当ならスゴイことです。特許どころかノーベル賞ものですぞ！？

でもって、100万歩譲って「ありがとう」「バカヤロー」に言葉の力があり、カビの繁殖をコントロールできたとしましょう。

だが、何もしなかったものにも単一のカビだけが発生している、というのは非常に不自然、不可解です。

何か「人為的なコントロールをしている」と見た方が正しいのではないでしょうか。

次に「ありがとう」＞「バカヤロー」＞「何もしない」の順に悪いような結論（結果）になっていますが、ことさら「何もしない＝無視」って、なんか相当主観入ってないかい？

何もしないよりバカヤローの方がいいのか？謎・・・

それと、カビの色で良い悪いが決まるのもねぇ。

白が良くって、緑はダメなのは何故？

緑色のカビ、ってことは「アオカビ」と思われますが、アオカビなら『ペニシリン』の原料にもなるんだけど・・・？

もうひとつ、「再現性はあるのか？」ということ。

100％でなくとも「10回やって7回は同じ結果が得られました」くらいなら再現性があります（最低でも10回やって3回成功くらいは必要）。

でも、そうでないのなら、たった1回だけなら「たまたま、奇跡的にこの現象が起こった」ということです。

ましてや「ありがとうの力」なんてことは言えないのです。

基本的に私は「言霊」はあると思うけど、それは「人が言葉に気持ちを乗せるもの」だと思っています。

つまり呪文のように「ありがとう」を連呼しても、何もならない、ということ。

その思いが奇跡を起こした可能性は否定できませんが、状況的に見れば、やっぱ似非科学とか、トンデモスピリチュアルの部類に入ると思います。

Facebookでは３色のカビの生えた写真を見て「言葉（言霊）のチカラはすごい！」といった大絶賛の声が圧倒的でしたが・・・

ダイジョウブ？（いろんな意味で）

可能性は否定されるべきではありません。

そして、可能性を追求していくのも科学であれば、ウソ偽りがないか検証していくのも科学です。

きちっと検証して、トンデモスピリチュアルに踊らされないようにお気を付けあれ。